追記④ 朝日新聞高専記事「(いま子どもたちは)高専で学ぶ」

平成30年10月28日から、朝日新聞に高専に関する記事が掲載され始める。 この記事が、たとえ「子どもたち」にとっての高専というアプローチであっても、高専制度の歴史、実態も踏まえた、多角的な視点を提供する、従って論評に値するものであるかどうか…

追記③ 『高専教育の発見-学歴社会から学習歴社会へー』書評

私筆者は、前章までを書き終えた後、矢野眞和ほか編『高専教育の発見-学歴社会から学習暦社会へー』を入手し目を通した。結論から言えば、豊富なデータを集めたうえ大変力がこもっているが(「力作」といえばホメ言葉だが、そういう意味ではない)、この本…

追記② 高専教育の実践性?

特集・大学教育の「実践性」『日本労働研究機構雑誌』No.687所収「『実践性』から見た高専教育」は、高専出身者に対するアンケート調査やウェブ調査に基づいて、高専卒の処遇を論じている(以下、「本稿」「著者」と略。また、以下で「アンケート原本」とし…

追記①-専門職大学法案成立に思う、外国記事に思うー

専門職大学法案が成立した。これに関連して、思うところを述べていきたい。ついでに、ある外国新聞記事にも言及しておきたい。 1.高専との整合性はついに論じられなかった 筆者は、高専は専門職大学制度に合流すればいいのではないかと述べた。その中で名…

終章

私は従順であった。高専は高校と大学と合わせた内容であり、高校と大学のカリキュラム上の重複をなくせば、一般科目も専門科目も大学にも劣らないという。私は、1年経過した頃から、どうもそうではないと感づき始めたが、そうであるなら、自分で補おうと思…

第10章ー実践的教育は高専の独占物ではないー

高専教育の残る拠り所は、「実践的」「実習重視」「即戦力」ということになる(この章を読めば、企業の採用担当者が言い、高専関係者が真に受ける、高専生の専門性とやらがどの程度に位置づけられるかを理解するヒントになろう)。実習重視は設立当初から行…

第9章-複線化への覚悟があるのか、複線化の意味がわかっているのかー

1.天野提案・職業高校昇格による公立高専増加とその問題点 (1)実は、天野郁夫『日本的大学像を求めて』(230頁)においては、地方公共団体が地方の職業高校の年限を2年延長した形で公立高専をもっと作ってはどうかという、提案が示されている。この1…

第8章ー単純な論理、そして骨太の試案ー

1.単純な論理 そもそも、高専設立当初から「大学並み、大学相当」「中堅技術者」などという宣伝を行わず、①“中等教育”の延長した5年制の工業高校としその内容も「中級」としてくれるか、②(職業)高校+短期大学工業科又は新設の専門職業大学に明確に位置…

第7章ー高専は専門職業大学へ合流せよー

専門職業大学が議論されている。実は、私はこれを評価している。 学力・能力である層(例えば15パーセント)までは大学工学部でよいが、それ以下の学力・能力層にとっては、やはり、実践的職業教育でいいのではないか。つまり、政府が言いたいことが、学力中堅下位…

第6章-高専増設批判(2)ー

かくして、高専増加と分野拡大は、そもそも高専がそうであるように、非常に大きな矛盾と衝突を生み、最後には失敗すると考えられる。どんなに大学相当と称し、そのようなものとして入学者を誘ってきた高専という制度をいじったところで、50パーセント以上…

第5章-高専増設批判(1)-

平成28年目下の職業専門大学構想とは別に、それに先立って、高専の6年制化、学士の学位授与、早期の大学院進学、一県一校化、他分野への拡大などの、高専改革方針が、与党の一案として示されている。 1.職業専門大学構想との関連性のなさー学位授与権に…

第4章-高専はモデルにあらず!(2)モデルの揺らぎと矛盾ー

せっかく『モデル』のような高専内部者に登場頂いたので、これが高専の入り口(入試)と出口(教育効果)について、どのような評価を下しているか、これを見た後、その矛盾を指摘しておきたい。ちなみに、ここで言われていることは、高専関係者のみならず他…

第3章-高専はモデルにあらず!(1)数学力・英語力の欠如、そして学力問題-

1.ある小論から かつて、学力低下と「ゆとり」教育批判の文脈で、西村和雄ほか編『分数ができない大学生』が話題となった。この時代の、これらの問題提起は、その後の教育政策にも影響を及ぼした。 ところで、同じく西村氏が編者となった『ゆとりを奪った…

第2章-高専教育における教養軽視と教養蔑視(2)-

最後に、2つの新書から、引用させていただきたい。 「単純な種類の無知に対処する技術は職人的な専門技術の教授と呼ばれた。これにたいして『大きくて厄介な』種類の無知に対処する技術には、教育・教養((Paideia)という呼び方がほとんど全ギリシア人の間に…

第1章-高専教育における教養軽視と教養蔑視(1)ー

1.教養軽視の構造問題 高専の学生は、専門科目に比べて教養がなさすぎる(あるいは、端的に、教養がない)と言われる。 先ずは、後期中等教育段階(高等学校課程)につき、高校普通科理系コース又は理数科と高専の教育編成表・カリキュラムを左右に並べて…

高専問題ー序章-